位相空間の定義(公理)について最初は全然理解できなかったのですが、ちょっと分かった気になってきました。
一般的な位相空間の定義は、以下のようなものです。(同値な定義はいろいろとできますが、下記の開集合を基にした定義が一般的と思います)
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集合 X の部分集合からなる族 τ で、以下の条件(公理)
1) 空集合 φ および全体集合 X は τ に属す
φ∈τ, X∈τ
2) τ に属する集合の有限個の共通集合はふたたび τ に属す
∀A,B∈τ ⇒ A∩B∈τ
3) τ に属する集合の任意個(無限濃度をも許す)の合併は τ に属す
∀A_λ∈τ ⇒ ∪A_λ∈τ (λ∈Λ(任意の添え字集合ラムダ))
を満足するものが与えられるとき、集合 X に τ の元を開集合とする位相が定まるといい、組 (X,τ) を X を台集合とし τ を開集合系とする位相空間と呼ぶ。
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Wikipediaの定義の項をもとに編集しました。
なお、τ(タウ)は位相(Topology)の頭文字Tに対応するギリシャ文字です。
いきなりこんな定義を書かれてもなんのことか分かりません。
また、Wikipediaには以下のような記述もあります。
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数学における位相空間(いそうくうかん、topological space)とは、集合に要素どうしの近さや繋がり方に関する情報(位相、topology)を付け加えたものである。この情報は関数の連続性や点列の収束といった概念の源といえる。
ユークリッド空間やその部分集合においては、点の間の距離をもちいて異なる点の間の近さを測ることができ、それに基づいた位相空間の構造が得られる。一般に、距離空間は最も想像しやすい種類の位相空間の例を与えているが、一方で距離空間の枠組みは柔軟性に欠ける面もある。
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ということで、位相空間とは距離空間で議論される連続や連結といった概念を距離を用いずに一般化したもの、ということになります。
私にはなかなか理解できませんでしたが、数学の本やサイトを乱読した結果、なんとなく分かったような気がしてきました。
今回もやはり単なる勘違いという可能性もありますが。
以下、私なりの理解をまとめてみます。
距離空間(X,d)から定義される開集合について
ε>0とし、点x∈Xの「ε近傍 Bε(x)」とは、
Bε(x)={y∈X | d(x,y)<ε}
すなわち、xから距離がε未満の点の集合であり、 「ε開円盤」「ε開球」といわれることもある。 (円盤/球は、二次元/三次元ユークリッド空間を想像するとよい)
集合A⊆Xが「開集合」であるとは、
∀x∈A, ∃ε, Bε(x)⊆A
すなわち、Aに属する任意の点xに対して、Aに含まれるようなε近傍が(xのそれぞれ毎に)存在する。
上記のように定義した開集合から、閉集合、開近傍、閉包、内部、境界、連続写像などの位相的概念の定義と定理が導かれます。例えば、
・閉集合とは、開集合の補集合
・x∈Xの近傍とは、xが属するような開集合
・Aの内部とは、Aに含まれるような近傍が存在する点の集合
・Aの境界とは、Aの内部でなく、Aの補集合の内部でもない点の集合
・Aの閉包とは、Aの内部とAの境界の和集合
など。
上記のように、開集合の最初の定義以外は、距離(から定義されるε近傍)を直接使わずとも、開集合さえあれば定義できます。
また、連続写像は、距離空間では最初はεδ論法を用いて、ε近傍で定義しますが、「写像が連続であることの必要十分条件は、開集合の逆写像が開集合であること」が導かれます。
距離から導かれる位相(開集合とそこから導かれる数学的概念)では、距離は(開集合の定義を導く以外には)直接的には不要ということが分かりました。
さらに、ε近傍から定義される開集合から以下の定理が成り立ちます。
Aが開集合 ⇔
∀x∈A, ∃B:開集合, x∈B⊆A
すなわち、Aに属する任意の点xに対して、xが属しAに含まれるような開集合Bが存在する
循環論法的な定理ですが、逆にいえば「最初に開集合ありき」とすれば、距離がなくても位相の議論ができることを示しています。
⇒開集合が満たすべき本質的性質(公理)はなにかと考えると、突き詰めると以下の三つの性質(開集合の公理)になる
1) X 自身および空集合は開集合である
2) 有限個の開集合 A_1, ..., A_n の共通部分は開集合である
3) 開集合の族 {A_λ|λ∈Λ}について,その和集合は開集合である
(非加算無限個であってもよい)